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闇色 8
2007-06-01 Fri 00:41

不躾な男性の視線に晒され動転した私は、昼日中に湯文字一枚の女性が廊下を歩いていることに驚きもしないと言うこの屋敷の異常さに気づきませんでした。 そんな事よりも、舐める様に粘つく視線から逃れたく、かといって早く寝室へと強請る事も出来ず八千草さんの陰に震える躯を縮め隠れて居るしかなかったのです。 そんな気の遠くなりそうな羞恥の時は、実際にはわずかな時間だったのでしょうが、私には永遠の責め苦のように感じられました。


「すみませんね、男ばかりの屋敷で柄が悪くて…」
「いえ…」 

ようやく、私の肩を抱くように男の前を離れ、厚い扉を開いて案内された部屋は昼間だというのに厚いカーテンが引かれ、薄暗い中に柱や、訳の分からない物の影が見えます。 そしてその中央に、特注と思われるほど大きなベットが置かれておりました。 これから、ここで、この方に…そう思うと知らずに顔をうつむけ、入り口から動くことが出来ない私に

「どうしました?」
「…」
「その姿をもっと彼に見せたいんですか?…恥ずかしい人ですね」
「えっ?… いやぁぁ!」


八千草さんの言葉に思わず振り向いた私はいつの間にか後をつけて来たのか、すぐ先に立ってこちらを見ている先ほどの方と視線を合わせてしまったのです。 私は小さな悲鳴を上げて転げるように部屋へと飛び込み、そのまま八千草さんの腕の中へと倒れこんでしまいました。 

バタン
がくがくと震える躯の後ろで私の運命の扉が重々しい音をたてて閉じられたのです。

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