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闇色 5
2007-05-17 Thu 23:24

私の差し出した紐を受け取り、微笑んだように見えたのは気のせいでしょうか? 視線をあわせることなど出来ずにうつむく私ですが、絹物の中までも見通そうとするかのような八千草さんの視線は痛いほど感じられます。 けれども、心が決まってしまったからでしょうか,震える指先ながらも今度は絞りの柔らかな生地のおかげか帯揚げはたやすく緩み、しゅるりと帯枕ともども床へと落とせました。 一瞬でも手を止めたら、気持ちが萎えてしまう、そんな急かされる様な心と、人の前で絹を脱ぐというはしたない事を早く終わらせたいという思いで、私は背に手を回しそのまま帯を解いたのです。 床に作った錦の渦から抜け出す私に手を貸してくださった八千草さんはそのまま床に散ったものを拾い上げて椅子の上へと纏めてくださいました。 

「あっ… すみません」
「いえ… 貴方の身につけていたものですから…」
「恐れ…入ります…」
「しかし…男というのはわがままですね。」
「えっ?」
「早く貴女の全てを見たいとも思いますし、もう少し、絹に隠された貴女を見ていたい とも思いますし…」

この一言で私の伊達締めに向かった手は宙に浮いてしまいました。 やっと決心して帯を解いたのというのに、夫以外の人に身を任せる為に自ら着物を脱ぐというはしたない行為が否応無しに意識されて、私の躯は明るい日差しの中で動くことが出来ませんでした。 唇を噛み締める私をじっと見上げる八千草さんをこれ以上御待たせする訳にはいかないと挫けそうになる心を励まし、ようやっと伊達締めを解くと押し込められていた乳房がまろび出てきました。 豊かな胸は本来ならば補正の下着を使い抑えておくべきなのでしょうが、着物は無理をして着るものではない、わざわざ補正などする必要は無いと、着物好きだった亡くなった祖母に教えられ、特別な下着など着けずに着付けておりました。 前の肌蹴た藍鼠色の鮫小紋に縁取られた相思鼠の襦袢に包まれた胸を見られる恥ずかしさに、私はとっさに両腕で胸を覆い後ろを向いてしまいました。 そんな私を咎める事もなく見つめる八千草さんの熱い視線を感じ私はただ背震わせているしかなかったのです。 それでも、うなじに背に注がれる視線に促されるように、腰紐をとき引き抜くと、私を包んでいた絹物の前が開き、私は瞳を閉じて、ゆっくりと左肩から着物を滑らせたのです。 こくっ…喉を鳴らす音が静まり返った客間に響き、左手から滑り落ちる着物がそのまま右肩から滑り床に落ちる音と重なりました。

「あぁっ…」

長襦袢に包まれた躯を両腕で抱いて、私は恥ずかしさに小さな声を上げてしまいました。

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